· シン · chrome-extension · 8 min read
【連載第4回】動かなくなったら「生もの」を直すだけ。AIを従えてツールを自分で維持管理する自走力
「昨日まで動いていたツールが突然止まった!」に動じない自走力を手に入れる最終回。壊れることを前提としたparser.jsの独立設計や、UI変更時にAIへ的確に修正指示を出す手順を伝授。AIに丸投げせずツールを安全に維持・運用する思考法をまとめました。

こんにちは、e-Shikumi-Laboのシンです。
AIを活用してツールを作り、自分で維持管理していく「仕組み化思考」の最終回(第4回)です。
これまで、Geminiの会話ログを自動保存するプロトタイプ作成から、Obsidian連携のためのMarkdown化、そして安全な全自動化への昇華についてお話ししてきました。
最終回となる今回は、Webデータを扱うツールを運用する上で避けて通れない「画面仕様変更による停止への対処法」と、AI時代に人間が持つべき「自走力」の核心についてお届けします。
1. Webデータ取得の割り切り:「画面にないものは取れない」
開発の途中で、「チャットが送信された正確な日時(タイムスタンプ)も一緒に記録したい」と考えたことがありました。
しかし、Geminiの画面構造をいくら解析しても、各発言の正確なタイムスタンプはHTML上に存在していませんでした。
Webデータ取得の大原則は、「ブラウザの画面上に存在しないデータは取得できない」ということです。
API経由ではなく、画面(DOM)からデータを抽出する以上、無いものを無理に取ろうとすると複雑な推測処理が必要になり、かえってトラブルの原因になります。
この「技術的な限界」を理解し、できないことは潔く諦めてシンプルさを保つ判断も、ツール作りの大切な要素です。
2. 仕様変更は欠陥ではなく「宿命」
他人のWebサイトからデータを取得するツールを扱う以上、Google側のデザイン変更やアップデートによって、ある日突然ツールが動かなくなる時が必ず来ます。
「昨日まで動いていたのに、急に保存されなくなった」
これはツールの欠陥ではなく、他人のプラットフォームに依存している以上回避できない「宿命」です。
大切なのは、「絶対に壊れない完璧なツール」を探し求めることではありません。壊れることを前提として受け入れ、「壊れた時にどこをどう直せばよいか」を把握し、自分でサクッと復旧できる状態を作っておくことです。
3. 「parser.js」による絶縁設計と、AIを使った修復
今回作成した「Chat Saver for Gemini」では、画面からデータを読み取る処理(DOM解析)を parser.js という独立したファイルに切り出しています。
このように通信処理(content.js)と解析処理(parser.js)を分けておくことで、Geminiの画面デザインが変わったとしても、修正するのは parser.js の中の指定場所(CSSセレクター等)だけで済むようになります。
画面が変わって動かなくなった時の修復手順
もし画面変更で動かなくなったら、人間が行う作業は以下の通りです。
DevTools(検証ツール)で新しい要素を確認する
Chromeで Gemini を開き、
F12キー(または右クリック >「検証」)を押して、質問エリアや回答エリアの新しいHTML構造を確認・コピーします。AIに修正を依頼する
コードを直接書き換える必要はありません。コピーした最新のHTML要素と、手元の
parser.jsをAIに渡して修正を指示します。
プロンプト例:
「GeminiのUI変更により
parser.jsが動かなくなりました。現在のparser.jsのコードと、最新の質問エリア・回答エリアのHTML要素を添付します。これをもとにセレクター部分の修正を行ってください。」
自分でコードを解読しなくても、変化した部分(入力情報)を提示するだけで、AIが数秒で修正コードを吐き出してくれます。
4. 【結び】AIをコントロールして「自走する」ということ
全4回を通じてお伝えしてきたかったのは、単なるツールの作り方ではありません。
第1回: コードの文法は完璧に理解していなくても、AIに任せればツールは作れる
第2回: 自分の業務課題(読みづらさ)に合わせて、仕組みを拡張していく
第3回: AIが出してきたコードのリスク(アカウントBAN等)に気づき、手綱を引く
第4回: 壊れることを前提に構造を整え、AIを使って自力で維持管理する
JavaScriptの文法や細かい書き方を丸暗記する必要はありません。
本当に人間が理解しておくべきなのは、システム全体の「入力(画面から取る)」「処理(重複を弾く)」「出力(GASへ送る)」という構造の地図と、データ取得先への配慮の視点です。
この構造の地図さえ頭に入っていれば、AIが出してきた危ういコードに気づいて修正を命じ、画面が変わっても的確な指示を出してツールを安全にコントロールし続けることができます。
ツールに使われる側から、AIを従えて仕組みを動かす側へ。
皆様もぜひ、AIとの正しい付き合い方を身につけ、自分に合わせた安全な仕組みを作って維持する「自走力」を手に入れてみてください。



